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Showing posts from August, 2023

「まぼろしのトマシーナ」と失われた記憶について

最近のテーマとして、私は、河合隼雄が紹介する物語や、村上春樹の作品、紹介する物語について書いていきたいと思っています。今回は河合隼雄がエッセイ「猫だましい」で心理療法の見本として解説しているポール・ギャリコの代表作「まぼろしのトマシーナ」についてです。この作品は1963年に ディズニーで実写映画 にもなっています。 今回も対話形式で、ややこしい内容をなるべく分かりやすくしようと試みました。対話相手に名前をつけていませんでしたが、今回から「なぎさ」(凪を当てます)とつけます。 なぎさ: 先生、おはようございます。貸してもらったポール・ギャリコの本2冊、読んでいます。以前教えていただいた ウィリアム・サローヤン は 小田扉の漫画 みたいでしたけど、ギャリコはちょっとジブリ映画みたいですね。 先生: それは良かった。「さすらいのジェニー」なんて、まさにジブリの冒険ファンタジーですね。両親の愛を受けていない少年が交通事故をきっかけに無意識の世界で猫になり、自身のアニマである猫ジェニーと冒険する。 なぎさ: アニマというのはユングが提唱した無意識の中にいる異性ですよね。私だったら男性形のアニムス。 先生: そうです。影、アニマ/アニムスといった無意識に潜む心のパターン(元型)は、人間の心の成長に深く関わっています。韓国のポップ・グループBTSが影に向き合うことをテーマにしたアルバム 「MAP OF THE SOUL : 7」 を発表したことも話題になりましたね。 なぎさ: 師長さん達、BTS好きです(笑)。ジェニーとの関わりの中で、主人公は母親の愛を疑似的に体験して、それからジェニーを奪おうとするボス猫デンプシーと対決する。先生、私、ネットで調べたんですよ。ギャリコが駆け出しのスポーツ記者だったころ、デンプシーという名のボクシングのヘビー級チャンピオンと闘ったんだそうです。記事のリアリティのために? まるで岸部露伴みたいです。 注)岸部露伴とは、荒木飛呂彦の漫画、ないし、それを基にした実写作品 「岸部露伴は動かない」 の主人公。非常に斜め上を行くやり方だが、彼の行動が結果的に人々の心を癒すこともある。古今東西、探偵役の主人公は、しばしばカウンセラーの役割を果たす。私は名探偵 フィリップ・マーロウ の直系 「CITY HUNTER」 がずっと好きです。 先生: 「さすらいのジェ